カ ラ フ ル な ふ ゆ

園山ふゆ 日々雑記

春に始まる

まだまだ秋が遠く感じられる某日、私は10年ほど暮らした杉並区を離れ、渋谷区の住人になった。

 

にぎわう駅前の道を両腕が地面に垂れ下がるほどの荷物とともに歩く。この場所は、私のことを知らない人だらけなのだと思うと嬉しくなった。例えば世界の果てまで逃げられたとしても日常は途切れることなく続いていくのに、引っ越しには他では得がたいリセット感があるから好きだ。

 

笹塚に引っ越すことになったのは偶然で、最初は他の街を候補にしていた。だから新線や快速に乗れば新宿まで一駅ということすら知らなかったけれど、都心にありながらこの街はどこか素朴でホッとさせる空気が流れている。駅前にきれいな商業施設をつくってはみたものの何だか垢抜けない。つまりこの街は私に合っていると理解するのに時間はいらなかった。

 

春が来た。

この街での暮らしや、華やかではないがそれなりにカラフルな日々のことを綴りたい。